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NEWS : 第一回・第二回日タイ伝統木造建築交流会議報告
第一回・第二回日タイ伝統木造建築交流会議報告令和4年本会は、タイにおける伝統木造建築の保存・修復の交流を目途に、令和4年12月、北部タイの建築士会や大学建築学部等と、基本的な情報交換のミーティングを実施した。 タイには「サイアム建築士会 The Association of Siamese Architect (ASA)」という建築士の全国組織があり、タイ北部・東北部・南部の3地方に、それぞれ地方支部を有しており、北部タイの中心都市である古都チェンマイには北部支部である「ランナー建築士会」が存する。 バンコクの全国本部のサイアム建築士会が行う事業のほかに、各支部が行う独自の事業も展開されている。建築士会北部支部の運営は、建築実務者と大学教員が、ほぼ半数ずつ参画している。 また、北部タイには建築専攻を置く大学が5大学あり、教員は大学を超えて互いに密接に連絡する関係にある。 サイアム建築士会のメンバーとの会議では、今後の全日本建築士会と北部タイの諸団体との連携の可能性ついて、「全日本建築士会のような海外の実績ある団体と連携できることはタイ側にとって光栄であり、日本のさまざまな知見が連携を通して導入できるとしたら、今後のタイの建築実務と教学の双方の発展にも極めて有益に違いない。ぜひ日の目を見るように期待したい」との意見が出された。 チェンマイを中心とする北部タイは、かつては「ランナー王国」と呼ばれる、バンコクとは別の王国があり、チェンマイはその都であったことから、古い寺院をはじめ伝統建築も多く点在している。その研究・保存や修復・街並みの維持なども地域の建築上の課題となっているが、様々な点でまだまだ十分ではなく、これらの点で全日本建築士会と連携できる部分は、多くあるのではないかとのことで、また、今後の動向として、伝統建築の集積に富む古都チェンマイを世界遺産に申請しようとする動きもある。 チェンマイの外にも、北部タイで比較的木造建築物が残されている近隣のランパーン県とプレー県(チェンマイから200キロ)にも足を運び、伝統木造建築物を視察すると同時に、保存に志のある現地の建築士等とのヒアリングを兼ねた公式のミーティングが開催された。 北部タイではチェンマイから200キロほど離れたプレー県が、従来から木材の産地として知られているが、現存する北部タイ伝統木造建築物も多く、やはり維持や保存が問題になっている。 プレー県での視察では、土地そのものは王国の所有で、他方、建物自体はキリスト教の団体の所有というケースも見受けられ、伝統木造建築の保存・修復にあたって、解決すべき問題も多い。 なお、タイ国立メージョー大学(チェンマイ)建築学部を訪問し、学部長以下複数の教員と面会し、伝統木造建築に係わる意見交換を行った。 また、在チェンマイ日本総領事館を表敬訪問し、総領事や副総領事(広報文化担当)と面会し、当会と伝統木造建築の集積に富む北部タイの建築士会、大学等との交流、協力の促進を図る計画について説明し、意見交換を行った。 在チェンマイ日本総領事館の面会者は、以下の通りである。 樋口 惠一 総領事、新関 大海 副領事(広報文化担当) 令和5年
令和5年11月には、主に以下の伝統木造建築物を視察した。
・チェンマイ大学 ラーンナー・トラディショナルハウス・ミュージアム
(移築された伝統的古民家等を野外展示) その他、プレー県・ランパーン県における7か所の伝統木造建築物を視察した。 特に、ランパーン県における、タイと西洋の折衷建築であるジンジャー・ブレッド様式と呼ばれる建築物は他に類例のない建築物として、世界遺産にも登録の機運が高まっている。なお、タイのコロニアル建築は、木造の建物に素焼きの屋根瓦、風の通気を確保するため窓の上部やドア・パネルに施された雷文細工、日陰をつくり出す屋根のついた長いバルコニー、雨期の雨よけ等が建築上の特徴となっている。 その後、国立チェンマイ大学建築学部を訪問し、更に北部タイ建築士会役員とのミーティングを行い、伝統木造建築の保存に係わる有益な意見交換をすることができた。なお、古都チェンマイでは、伝統木造建築を改修してホテルやレストランに利活用している種々の優れた実例を見ることができ、非常に参考となる機会となった。今回の有益な成果を経て、今後、できる限り当地の関係機関の要望等を踏まえ、持続的に発展できることを目途として、伝統木造建築に係わる技術交流を発展させて行くことが望まれる。 日タイ伝統木造建築交流のための調査では、伝統木造建築の集積地でもあるタイ北部、特にプレーとランパーン、チェンマイにおける貴重な伝統建築を視察することができ、また、各地の関係者と貴重な意見交換をすることができ、今後に向けて大変意味のある機会となった。
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