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2023年度一級建築士学科試験の講評

平成21年に一級建築士試験の内容の見直しが公表されて以来、近年の技術の進歩、社会状況の変化等に係わる出題が徐々に増加する傾向にありましたが、本年の試験では、各科目で更にその傾向が顕著となりました。

特に本年の試験では、計画、環境・設備の問題で近年の技術の進歩、社会状況の変化に即した難度の高い出題が目立ち、総じて学科試験全体として難度の高い試験となりました。

学科 I (計画)

計画の出題範囲は広く、例年、環境、法規等の科目の分野からも出題されるのが特徴ですが、本年も幅広い分野から出題されました。

但し、本年の出題分野として、例年に比し、建築史、建築作品に関する分野の出題が減少し、建築計画に関する分野の問題が増え、社会情勢を反映した用語として、リスクコミュニケーションやコロナ禍に係わる感染症病室に関する問題が出題されました。

また、新たな用語としてTDMやMaaSに関する問題として出題されるなど、全体として難度の高い出題が目立ちました。

学科 II (環境・設備)

本年の環境・設備の問題は、新規の難度の高い問題が目立ち、単なる過去問中心の学習では得点が難しい問題が多く出題されました。

環境工学の分野では、太陽位置図の読み取り、騒音減衰のための植栽、喫煙室の気流の風速等、新規の視点からの出題や新規の用語の出題が目立ちました。

また、建築設備では、FRP製の受水槽の水槽照度率、排水ますの間隔、炎感知器、エレベーターの設計用水平地震力を算定する場合の設計用水平標準震度等、新規の用語に係わる高難度の問題が出題されました。

総じて本年の環境・設備の問題は例年に比し、一段難度の高い出題傾向のものとなりました。

学科 III (法規)

法規は、例年通り建築基準法に関する問題が20問、関係法令に関する問題が10問出題され、近年重視されている建築士法に関する問題が3問出題されました。

初出題の問題としては、可燃物の発熱量、景観重要建築物、長期優良住宅、維持保全計画等の用語に関する問題が出題されましたが、総じて問題の難易度としては例年並みであったといえます。

学科 IV (構造)

出題分野は、例年通り、構造力学6問、各種構造21問、建築材料3問が出題されました。

この中、構造力学は、概ね例年通りの難易度の問題でしたが、「軸方向力が作用する部材の軸力と軸方向変位」、「トラスの塑性崩壊荷重」はやや、より深い理解力を要する問題であったといえます。

また、各種構造に関する問題では、鋼材ダンパーのエネルギー吸収能力に関する問題や木材のめり込みに関する問題等やや難度の高い問題も出題されましたが、総じて本年の構造の問題の難易度は例年並みであったといえます。

学科 V (施工)

施工の問題は、近年、比較的難度の高い問題が続いていましたが、本年の問題は、仮設建築物等の許可申請書、浅層地盤改良、実績率の小さい粗骨材等の初出題の用語等に係わる新規の問題も出題されましたが、総じて例年並みの難易度の出題であったといえます。

以上のように、本年の各科目の出題の難易度は、計画と環境・設備の難易度が高く、法規、構造、施工の難易度は例年並みで、総じて、全体としての難易度は例年より高かったといえます。 全体の出題傾向として単なる過去問による学習では得点できず、より深い理解力を要する問題の出題が目立つものであったといえます。

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