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令和5年度二級建築士学科試験の講評

本年の学科試験の難易度は、計画、法規、構造、施工とも総じて極端に難度の高い出題は見られず、過去の出題範囲内の事項に関するしっかりとした理解、知識があれば解ける問題が多かったといえますが、それらの中で強いて言えば相対的に計画、法規の難易度が概ね例年並みであった一方で、構造、施工の難易度がやや高かったといえます。

学科 I (計画)

建築史に関する問題は、例年のように2問出題され、新規の設問の選択肢を一部含む問題でしたが、広範囲な正確な知識を問う良問といえるものでした。また、伝熱、温度、換気、日照、色彩等の環境工学に係わる問題も既出題範囲内の事項についての知識を身につけていれば解ける問題が比較的多く出題されました。但し、以上についても単に表面的な知識だけでなく、特に湿り空気線図、色彩については、より深い理解力、応用力を要する問題が出題されていた点は注目されます。他方、今日的問題として注目されている環境・省エネルギー、建築設備の分野では、新規の設問肢を含む問題が一部出題され、また、計画各論についても、一部に新規の設問肢を含むものが出題されましたが、既出題の設問肢についての充分な理解があれば正解を得られる問題が多く、総じて本年の計画の問題は例年に比し同程度の難易度の問題であったといえます。

学科 II (法規)

例年通り、建築基準法についての問題が20題、その他建築関連法規に関する問題が5題出題されましたが、総じて、新規な問題や極端な難問はなく、比較的素直な標準的な難易度の問題が出題されました。但し、建ぺい率に関する問題で角地の緩和を考慮する問題や高さ制限についての問題で高低差を考慮する比較的難度の高い問題が出題されたのは注目されます。このように建ぺい率や高さ制限や容積率に関する問題等で、毎年のように出題されている問題であっても、普段の緻密な学習に基づく確実な知識がないと正解に至らない問題も多く出題されていたことには毎年のことながら留意しておく必要があります。また、近年の木造重視の中にあって、木造の構造力学に係わる問題で注意すべきキーワードを含む問題が出題されたのも注目されます。なお、建築基準法以外の問題としては、近年、重視されてきている建築士法の問題が例年通り2問出題され、その他の問題として、高齢者・障害者移動等円滑化促進法に関する問題と近年特に注目されている分野の問題として建築物のエネルギー消費性能に関する法律についての問題が融合問題として出題されました。建築物のエネルギー消費性能に関する法律についての融合問題は、やや難度の高い問題でしたが、全体的には、既出題範囲内の事項についての着実な学習の積み重ねにより、合格点を取ることのできる例年並みの難易度の出題が多かったといえます。

学科 III (構造)

出題分野の構成は例年通りで、力学に関する問題が6問、各種構造に関する問題が13問、材料に関する問題が6問でした。力学の問題では、断面一次モーメントと断面二次モーメントを組み合わせた問題が新規の問題として出題され、また、許容せん断応力度や曲げモーメント関する問題では、理論に対するしっかりした理解が必要な、やや難度の高い応用力を要する問題が出題されました。また、近年の木造に対する見直し機運が高まる中に合って、木造建築に関する構法、構造に関する問題では、初出題となる選択肢を含むやや難度の高い問題が出題されたことも注目されます。なお、RC造、S造に関する問題では、一部にやや難度の高い選択肢を含む問題も見られましたが、特に構造計画では、塑性ヒンジ、免震構造周期化、応答加速度等の初出題の内容を含む高度な知識を要する選択肢を含む問題が出題されたのが注目されます。総じて、過去の既出題範囲の事項についての単なる記憶ではなく、しっかりした理論に対する理解が必要な問題の出題が目立ち、難易度は例年に比して高かったと考えられます。

学科 IV (施工)

施工では、やや難度の高い問題が出題される傾向が続いていますが、本年の試験では近年注目されている木造に係わる問題が、特に難度の高い選択肢を含む問題が3問、出題されたのが注目されます。また、鉄筋工事や施工機械に関する問題も初出題の難度の高い選択肢を含む問題でした。なお、請負契約に係わる問題は、民間建設工事標準請負契約約款から出題され、新規選択肢を含む難度の高い内容の問題でした。本年の施工の問題は、全体的に、難度の高い選択肢を含む問題が多く、例年に比して難易度は高かったと考えられますが、他方、全ての選択肢が新規の出題であったものは少なく、既出題範囲内の選択肢に対するしっかりした知識があれば解ける問題も多く出題されていたため、既出題範囲内の事項に関する着実な知識をどれだけ有しているかが合格点を得るための重要なポイントであったともいえます。

上述のように、本年の学科試験の問題は、計画、法規は例年並みの難易度で、構造、施工は例年よりも高い難度の問題であったと考えられますが、総じて既出題範囲内の事項についての知識を表面的ではなく、理論の理解等についてもどれだけ深く、着実に有しているかが、正答率に大きく影響するものであったといえます。

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