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令和5年二級建築士設計製図試験課題の講評

本年の試験課題の特徴、本質的な意味について
-極めて広範囲な課題、着実なエスキース力の養成が合否の鍵-

専用住宅(木造)

注意事項

試験問題を十分に読んだうえで、「設計製図の試験」に臨むようにしてください。なお、設計与条件に対して解答内容が不十分な場合には、「設計条件・要求図書に対する重大な不適合」と判断されます。


本年の試験課題は専用住宅(木造)で、一見何の変哲もない極めて単純なもののように思われるものですが、実はそこにこそ、この課題の本質的な意味、ある種の難しさがあるようにも考えられます。

これまで二級建築士設計製図試験、特に木造の課題として実に多くの住宅に係わる専用住宅、または店舗等を併設した併用住宅の課題が出題されてきました。
しかしながら、従来まで出題された課題の場合、専用住宅であっても、単に「専用住宅」として出題されたことは一度もなく、例えば、「介護が必要な親(車椅子使用者)と同居する専用住宅(平成26年)」、「趣味(自転車)室のある専用住宅(平成23年)」、「兄弟の二世帯と母が暮らす専用住宅(平成22年)」、「趣味(フラワーアレンジメント)室のある専用住宅(平成16年)」等の副題の付いた専用住宅として出題されており、また課題に専用住宅として付記されていなくても、「家族のライフステージの変化に対応できる三世代住宅(平成29年)」、「高齢者の集う趣味(絵手紙)室のある二世帯住宅(平成17年)」等も、実質的には専用住宅の課題であったと考えることができます。

以上のように、実に様々な専用住宅としての課題が、その専用住宅の内容が付記されて出題されている訳ですが、それでは、本年の課題のように副題が付記されずに単に「専用住宅」と出題される場合、どのような内容の課題となり得るのか、以下に考えてみることとします。

(1)「専用住宅」の内容の副題が付記されずに、ただ単に専用住宅として出題されていることからは、当然、上記のような様々な付記の内容が含まれた課題となることがあり得ると考えられますので、それだけに実に様々の内容の専用住宅としての課題が出題される可能性があると考えられます。

(2)上記のように様々な内容が付記された専用住宅の課題が過去に出題されてきた訳ですが、実はその中でも「家族のライフステージの変化に対応できる三世代住宅(平成29年)」は特に注目される課題であったと考えられます。
それは、他の課題が全て現在の時点を対象として設計の内容を考えることとしているのに対して、この課題は、将来への時間の経過をも考えて設計する(例えば、子供が将来独立して家を離れた場合に、元の子供部屋を必要最小限の改修で有効活用することまでも現時点で考慮して設計する)もので、実は、このような時間の経過まで考慮に入れた課題は、一級建築士の設計製図試験の課題としても現在まで一度も出題されたことはなく、その意味でこの課題は極めて注目される課題であったと考えることができます。
以上のようなことを考えてみますと、本年の課題のように特別な付記がなく、単に「専用住宅」として出題される場合、今まで出題されたことのない、全く新たな視点での内容の専用住宅としての課題が出題される可能性も考えられます。
例えば、近年のコロナ禍以後、広く普及して来ている在宅勤務(テレワーク)をすることを考慮した専用住宅等で、この場合は、従来含まれていなかった在宅勤務の場としての機能を含む専用住宅を考えることとなります。
さらに、今年度の試験課題としては、例年のように、「木造二階」と記されておらず、単に「木造」と記されており、「注」として、建築物の階数は、試験問題の設計条件で指定すると記されていること等から、三階建ての住宅となる可能性が極めて高いと考えられます。
このように考えてみますと、特に内容の付記のない「専用住宅」の内容は実に広いものとなると考えることができます。

(3)特に付記のない単なる「専用住宅」として、上記(1)(2)のように実に様々な内容の専用住宅が含まれる訳ですが、他方、特別の内容を含むものでもない一般的な家族構成のごく普通の専用住宅であっても、例えば敷地に高低差がある場合で、敷地の南側にしか道路が接しておらず、北側に向かって上げ勾配となっている場合に、南側にとるべき庭に極力影響を与えずにどのようにアプローチとしてのスロープ等を計画し、駐車場を計画するか等、高度な計画力が必要となります。
また、自然採光上、通風上等、省エネルギー上にも有効な吹き抜けをパッシブデザインを考慮して計画する等、ごく普通の専用住宅であっても課題の設定によっては、相当の計画力を要する高度な課題ともなり得る訳で、上記のような場合も、特別な付記のない「専用住宅」として出題される可能性のある例として考えることができます。

以上、特別に課題内容についての付記のない単なる「専用住宅」として出題される可能性のある様々な課題例について考えてみましたが、今回の課題は、従来の例にない出題形式であることから考えてみますと、やはり上記の(2)に該当する課題となる可能性が最も高いとも考えられますが、上記の(1)(3)のそれぞれの場合についても、様々な内容の課題として出題される可能性があり、更に(1)(2)(3)の組み合わされた課題となる場合を考えてみますと、実に様々な内容の課題が出題される可能性がある訳で、結局、特別な付記がないということは逆にそれだけ出題範囲が広くなり得るとも考えることができる正に歴史的ともいえる課題であるともいえます。
それでは、このような広範囲から出題される可能性のある試験の課題に対してどのような準備が有効となるのでしょうか。
このような予想の付きにくい広範囲から出題される課題に対しては、ヤマを当てる式の準備は全く意味がなく、逆にどのような課題が出題されても有効に対応できる、どのような課題にも共通する特に基礎的な計画力、着実なエスキース力を身に付けておくことが、唯一の最も有効な勉強法であるといえます。

本会の設計製図講座では、通学、通信講座ともに全く同一のカリキュラムによる厳選10課題の演習・添削により、基礎からの設計力、製図力の徹底養成を図るとともに、上記のようなどのような課題にも共通的に対応できる着実なエスキース力の徹底養成を図ります。

二級建築士講座

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