本年の学科試験の難易度は、計画、法規、構造、施工とも総じて極端に難度の高い出題は見られず、過去の出題範囲内の事項に関するしっかりとした理解、知識があれば解ける問題が多かったと言えますが、それらの中で強いて言えば、計画、法規の難易度がやや低かった一方で、構造、施工の難易度がやや高かったと言えます。

建築史に関する問題は、例年のように2問出題されましたが、広範囲な正確な知識を要する良問と言えるものでした。環境に関する問題はしっかりした基礎知識を身に付けていれば解ける問題で、換気に関する計算問題も基本的な内容のもので、特に新規な難問は見られませんでした。他方、色彩、建築物の環境評価、集合住宅、まちづくり等に関する設問の一部には、新規な設問として過去に一級建築士試験に出題されたものが新規の選択肢として出題されていたことには注目されます。但し、総じて、過去の出題範囲内の選択肢が分かれば解ける問題が多く、全体的には過去の出題範囲の事項についての確実な理解・知識が身に付いているか否かが、正解に至る鍵となったと考えられます。

例年通り、建築基準法についての問題が20題、その他建築関連法規に関する問題が5題出題されましたが、総じて、新規な問題や極端な難問はなく、比較的、素直な標準的な難易度の問題が出題されました。但し、建築基準法に関する問題では、一定の用途地域内の条件で「新築することができる建築物」あるいは「新築することのできない建築物」を問う問題や、容積率や高さ制限に関する問題等、毎年のように出題されている問題であっても、普段の緻密な学習に基づく確実な知識がないと正解に至らない問題も多く出題されていたことには留意しておく必要があります。なお、建築基準法以外の問題としては、近年、重視されてきている建築士法に関する問題は、例年通り2問出題され、1問が建築士の在り方に関する問題で、1問が建築士事務所に関する問題であったのも例年通りでした。

出題分野の構成は例年通りで、力学に関する問題が6問、各種構造に関する問題が13問、材料に関する問題が6問でした。力学の問題は標準的な難易度の問題ですが、単なる記憶ではなく、正解に至るためには、理論に対するしっかりした理解が必要です。また、近年、木造に対する見直し機運が高まる中にあって、木造建築に関する構法、構造に関する問題が昨年に続き3問出題されたことは注目されます。なお、RC造、S造に関する構造計画、耐震設計では、一級建築士試験でも出題されるやや難度の高い選択肢を含む設問も見られましたが、総じて、過去の既出題範囲についてのしっかりした理解があれば、概ね正解に至ることのできる問題であったと言えます。

近年、施工では、やや難度の高い問題が出題される傾向が続いていますが、本年の試験では建築士法における工事監理の職責についての問題や廃棄物の処理に関する問題が出題されていたのが注目されます。また、近年重視されている木工事について、木造住宅の布基礎についての問題などやや難度の高い問題が出題され、更に、改修工事及び鉄骨工事においても、新規の選択肢を含む設問が出題されていたのが注目されます。但し、新規の設問を選択肢に含むものであっても、既出題範囲内の知識があれば解ける選択肢からの消去法により解ける問題も多かったと言えます。

以上から、二級建築士学科試験の合格の要は、あくまでも過去の既出題事項に対する着実で正確な理解と知識を得ることを基として、その上に厳選された演習問題等を通じた着実な実践力を養成することがポイントとなると考えられます。