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2019年度一級建築士学科試験の総評

本年の一級建築士学科試験の内容は、総じて過去問についてしっかりした知識と理解力を有していれば解くことが出来る問題が比較的多く含まれていたことが特徴といえます。

ただし、過去の出題範囲からの出題といっても、単なる表面的な知識だけでは解くことが難しく、より深い理解力を必要とするように出題形式に工夫を凝らしたものも多く見受けられました。

また、本年の試験では、従来の出題範囲外からの新規の内容の問題も多く見受けられましたが、その場合でも正答肢は従来の出題範囲内からの内容に関するものが多く、以上から過去の出題範囲内の問題(過去問)についてのしっかりした知識・理解力を有していることが、得点を伸ばす上で重要な鍵となったといえます。

以上は、概ね各科目についていえることですが、施工については、他の科目に比し、新規の問題も多く含まれ、近年の難化傾向の延長線上にあり、難度の高いものとなっています。

学科 I (計画)

各分野からの出題数は、建築史・実施例6問、建築計画8問、都市計画3問、マネジメント1問、計画・工事監理1問、建築積算1問でした。

上記のうちで、建築史、実施例、都市計画の実施例の8問中、6問は過去の出題範囲内からの問題で、過去問をしっかり理解できていれば得点できる内容のものでした。新規の問題としては、スマートシティ、ゲーテッド・コミュニティ、ブラウンフィールド。コミッショニング、ECI方式、CRE戦略等に関する問題が出題されたものの正答肢が過去の出題範囲内からのものが多く、総体的に難易度はやや例年に比し低かったといえます。

学科 II (環境・設備)

各分野からの出題数は、環境工学10問、建築設備10問でした。 環境工学10問の中の3問は「絶対湿度の計算」、「重量換気量の計算」、「平面照度に関する計算」の問題でしたが、いずれも過去の定番ともいえる問題で、過去問題をしっかり学習している人には難しくなかったと思われます。

なお、カラーレーション、ウォーミングアップ制御、微気候、バスクブ曲線等の新規の内容を含む問題も出題されましたが、いずれも正答肢は既出題範囲内の内容のものでしたので、これらも過去問題の学習で対応可能だったと考えられます。 総体的に難易度はやや例年に比し低かったといえます。

学科 III (法規)

分野別の出題数は例年通りの建築基準法20問、関係法令10問でした。 関係法令では建築士法の問題が融合問題を含め4問出題されましたが、これも例年の建築士法を重視する傾向に変わりありませんでした。

本年の問題の特徴は、「立体道路制度」、「田園住居地域」、「老人ホーム等の共用廊下、階段の容積率緩和」等の直近の法改正も含めて近年の法改正に係わる問題が出題されたことでした。 また近年、毎年出題されている「木造住宅の軸組の最小限の長さを求める」図解問題は、本年は「地盤が著しく軟弱な区域として特定行政庁が指定する区域内における3階建て」という条件のもとでの出題となったことなども注目されます。

総じて、一部に法改正等に係わる新規な範囲からの問題が散見されるものの、概して、既出題範囲内についての着実な知識があれば解ける問題が多く、難易度は例年並みかやや低かったものと考えられます。

学科 IV (構造)

各分野からの出題数は、構造力学6問、各種構造21問、建築材料3問でした。

全体的に、過去問として出題されたことのある既出題範囲内からの問題が多く、過去問に対するしっかりした知識があれば解ける問題が多かったといえますが、計算問題では「全塑性モーメント」、「梁の剛性と層間変位との関係」に係わる問題や文章問題では「横補剛材の数」、「限界細長比」、「内部摩擦角」、「水平地盤反力係数」に係わる問題等、単なる表面的な知識ではなく、より深い理解力を要する比較的高度な問題も散見され、難易度は例年よりもやや高かったものと考えられます。

学科 V (施工)

各分野の出題数は、施工計画・施工管理から4問、各部工事から20問、請負契約から1問で例年通りでした。 本年の施工の問題の特徴は、まず、過去の出題範囲内からの問題であっても、単なる表面的な知識では解くことができず、より深い理解力や応用力を要するように工夫された問題が多かったといえます。

また、ほとんどの問題に新規の設問の肢が含まれており、それだけに、既出題範囲内からの設問肢については、取りこぼしなく解くことのできる力をつけておくことが正解を得るために不可欠であったといえます。

更に本年度の問題で注目すべきことは、「監理者が一般的に行うものとして」ということを条件とした問題が9問出題されたことで、従来以上に施工における建築士の立場での「監理」を重視したものといえます。 総じて、施工の問題の難易度は近年の難化傾向の延長線上にあり、高かったといえます。

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