全日本建築士会について 50余年の建築士育成事業の実績をもとに、社団法人全日本建築士会が総監修した、建築関連資格の特別養成講座

合格への鍵 講座>本試験の総評>設計製図試験の総評(一級)

−合否の重要ポイントの分析・解説−

温浴施設のある「道の駅」
- 高い設計の自由度に対して高度な建築計画力を要する課題 -

平成26年の設計製図試験の内容は、概して、平成21年に行われた試験内容の見直し以来、近年の傾向となっている高い設計の自由度に対して高度な建築計画力を問う内容のものとなりました。

- 本試験課題の内容の傾向 -

上記の試験内容の見直し事項の中でも課題の設計条件の一部については、受験者自身が考え設定することとなった点は、特に注目される点ですが、設計の与条件の一部を提案する能力も設計者としての能力の重要な要素であることを反映したものであると考えることができます。本課題でも、それが徹底したものとなり、施設の構成主体である地域特産品売場、レストラン、温浴室、休憩・情報室等の面積については受験者が想定することとなっており、先ず、受験者の確実な知識の基に、課題条件の一部について、適切な判断を問われるものとなっています。
更に本課題では、受験者が建築計画上、判断しなければならない裁量の余地が大きくなってきていること、すなわち、設計の自由度が高くなっている点も、近年の顕著な傾向に沿うものとして注目されます。

- 高い自由度の課題条件と高度な建築計画力 -

すなわち、本課題は市街地ではなく、郊外の景勝地に立地するものであることから、景観等の敷地の環境条件に十分配慮することが求められ、具体的には、建物内からの景観(敷地南側の渓流への景観)への眺望や敷地東側の親水公園との関連をどのように考慮するか、また、建物の周辺環境への配慮として、設計条件に示された勾配屋根をどのように計画するかが重要ポイントとなります。
また、この課題の施設自体が従前の課題に対して比較的新しい傾向ともいえるものですが、多様な機能を併せ持つものである中で、先ず、課題条件を適確に読みとって、この施設が目的とする機能を充分反映したものとする必要があります。 すなわち、来訪者に対して、地域情報の発信や地域の特産品の販売等を通して、地域の活性化を図るとともに、他方で様々な地域特産品の販売や温浴室の利用、防災備蓄倉庫の設置等、地域の拠点となることを目指すものであることが、先ず、前提条件であることを理解しておくことが必要です。
さらに、この課題では、24時間利用可能な部門とその他の部門と管理上区分する明確なゾーニング、自然採光及び自然通風を積極的にとり入れることの計画上の配慮、勾配屋根を活かした室内空間の構成なども建築計画上の重要なポイントとなっています。
以上のように、本課題で計画上考慮すべき要素が多く、また、それらを比較的緩い設計条件の中で、全体構成の中でどのように考えるか、計画上の自由度の高い課題となっています。
総じて、本課題は、高い設計の自由度に対応する、高度な建築計画力が特に合格のための重要な鍵となる内容のものであるとともに、また、本課題では、構造計画と設備計画について従来に増して広範なしっかりした基礎知識を問うものであったことが注目されます。
すなわち、構造計画では、勾配屋根について構造上配慮したこと、設備計画については、個々の設備機器の設置場所とそれらの機器の維持管理上の配慮、勾配屋根や吹抜等についての環境負荷低減に関して配慮した事項等が記述内容として求められました。

- 評価基準の高度化への適確な対応 -

上記のように、本課題の出題内容は、概ね近年の出題傾向の延長線上にあるものと考えることが出来ますが、設計計画上の高い自由度や構造計画、設備計画上で、より広範な知識を問うものであるなど、従来にも増して高度なものであったということができます。
なお、本課題の設計条件としては、従来の課題で時折みられた意外性・予想外の条件はあまり見られず、受験者にとっては、比較的取り組みやすい印象のものであったとも考えられます。
しかしながら、無論、それだけで試験の難易度が下がったとは必ずしも言えません。例えば、ゾーニングや動線について、実際の設計では、質の高い設計である程に厳密に検討されるわけですから、試験でも従来以上に厳密な基準で評価されることとなる可能性もあるわけで、その意味では、設計製図の試験として、むしろ高度なものになると考えられなくもありません。
26年の本会講座では、敷地周辺の環境との関連や建物の全体構成の中で、吹抜やアトリウムを生かした空間構成、勾配屋根を効果的に生かした室内空間の形成、地域外からの来訪者と地域住民との交流の場の在り方等、本試験課題とも多くの共通点を有する厳選課題により、近年の設計製図試験で特に合否の鍵となる自由度の高い設計条件に対する高度な建築計画力の養成に努め、また、様々な条件に対応するための構造、設備計画に係わる広範囲で、着実な計画力と記述力の養成に努めました。

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