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平成26年度一級建築士学科試験の総評
平成26年の学科試験の内容は、概ね平成21年に行われた試験内容の見直し以来、近年の傾向に添うものであったといえます。すなわち、試験の出題範囲は従来の範囲内からのものであっても、より深い理解力、応用力がないと解けない問題、また、従来の出題範囲にとらわれず、近年の社会状況を濃厚に反映した内容の問題が今年も一定の割合を占めており、総じて難易度は例年に比してやや高かったといえます。
学科 I (計画)
この科目の出題分野は、歴史、各種建築計画、建築基本単位、都市計画等、広範囲で多岐に渡りますが、5科目中で最も新規な問題の出題数が多く、それだけに難易度もやや高くなったといえます。
歴史では、伊勢神宮と出雲大社に関する問題が出題されていますが、いずれも昨年、式年遷宮を迎え、社会的にも大きな話題となったのは記憶に新しいところです。また、各種建築では、高齢化社会を反映した高齢者福祉施設に関する問題が出題されていましたが、近年の傾向として、この種の問題は定番となった感があります。
また、工事監理に関する問題の出題も注目されますが、工事監理は、施工管理を確認する設計者側の業務であることを考えれば、計画の科目で出題されるのは当然ともいえる訳で、これも近年の傾向として注目されます。
学科 II (環境・設備)
この科目は、日照・日影、熱力学等の計画原論と空調等の設備分野から成り、近年の環境・省エネルギーといった最も今日的な問題として重要視されている分野であることから、ここ数年、新規な比較的難問ともいえるものの出題も目立ちますが、本年は、設備機器に対する耐震性についての問題がやや新規な問題として注目されるものの、総じて新規な出題範囲からの問題は少なく、概ね、確実な基礎力があれば解ける問題が多かったことから、概して難易度はやや下がったといえます。
但し、試験の評価は基本的には相対評価であり、難易度が下がれば、合格基準点は上がることも考えられ、今日的問題に関係の深い科目としても、常に注目すべき科目であることに変わりはありません。また、計画原論は、記憶によるだけではなく、理論に対する深い理解と応用力が欠かせないことも注意する必要があります。
学科 III (法規)
この科目の出題分野は、建築基準法の単体規定、集団規定及び関係法令から成り、各分野からの出題比率は概ね例年通りで、関係法令からの出題は10問となりました。
単体規定からの問題としては、学校に関する規定と特に木造の防火・耐火に関する規定に係わる問題が多かったのが注目されますが、近年、木造建築が見直される傾向がある中で、学校建築を木造とする試みも増加傾向にあることも影響していると考えられます。
また、関係法令からの出題として「建築物の耐震改修の促進に関する法律」の昨年改正された部分に係わる問題が出題されましたが、これは本来、この法律が法の不遡及の原則から努力義務規定であったものを一部義務化したもので、社会状況を濃厚に反映した問題であったといえます。
更に、建築士法における免許取り消し、罰則に関する問題も出題されていますが、これも昨年、社会問題となったことの反映と考えられるもので、法規は特に社会状況との関係が直接的に強いことから、今後も、その折々の社会状況と係わりのある問題については注意する必要があります。他方、建築基準法の集団規定に係わる問題は、概して、素直な基本力を問う問題が多かったといえます。
学科 IV (構造)
この科目の出題分野は、構造力学、構造計画、各種構造、建築材料からなりますが、各分野からの出題数は概ね例年通りでした。
本年の出題傾向として注目されるのは、塑性変形、靱性に関するやや高度の内容の問題が比較的多く出題されているのが注目されます。本来、この科目では、理論に対する確かな理解が欠かせない問題が多く、本年の問題では、更にその傾向が強くなっているとも考えられます。また、木造に関する問題も、木造建築の見直し傾向を反映し、近年の傾向に沿い出題されているのは注目されます。
学科 V (施工)
この科目の出題分野は、施工計画、工事管理、各種工事、請負契約と多岐に渡り、理論に対する理解というよりも、記憶により解くことのできる内容の問題が多いといえますが、近年の問題は単に表面的な記憶によるだけでなく、その規定の根拠となる事象への確かな理解が欠かせない問題が増えてきている傾向があり、本年も表面的な記憶だけでは対応できない問題の比率が高くなってきていることは注目されます。また、請負契約に係わる問題も例年同様に出題されており、近年の傾向として今後も留意する必要があります。
- 2014年7月28日 -

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