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平成25年度一級建築士設計製図試験の総評

「大学のセミナーハウス」

- 高い設計の自由度に対して高度な建築計画力を要する課題 -

平成25年の設計製図試験の内容は、概して、平成21年に行われた試験内容の見直し以来、近年の傾向となっている高度な建築計画力を問う内容のものとなりました。
すなわち、課題の設計条件の一部については、受験者自身が考え設定することとなった点は、上記の試験内容の見直し事項の中でも特に注目される点ですが、本課題でも、それが徹底したものとなりました。施設の構成主体であるセミナールーム、宿泊室、浴室、食堂、事務室等の諸室については、利用者数が示されるのみで、諸室の面積については受験者が適切に想定することが求められるものとなっており、課題となる施設について受験者が確実な知識を有していることが、先ず問われるものとなっています。
更に本課題では、受験者が計画上、判断しなければならない余地が大きくなってきていること、設計の自由度が高くなっている点も、近年の顕著な傾向に沿うものとして注目されます。
すなわち、本課題は市街地ではなく、郊外の景勝地に立地するものであることから、景観等の敷地の環境条件に十分配慮することが求められ、具体的には、建物内からの景観(敷地南側の湖の景観)への眺望をどのように考慮するか、また、建物の周辺環境への配慮として、設計条件に示された勾配屋根をどのように計画するかが重要ポイントとなります。
また、設計条件に示された施設の共用部門を地域住民との交流の場ともなるようにするということも、敷地の条件を十分に考慮した上での計画であることが求められます。
更に、この施設では大きな比重を占める天井高5m以上の無柱の大空間であるアトリエをどのように施設全体の中に位置づけるか、1階と2階を空間的に結び付ける吹き抜けをどのように効果的に計画するか、また、勾配屋根を内部空間の構成上どのように生かした計画とするか等も、本課題の建築計画上の重要ポイントとなります。
なお、24年度の試験課題でも要注意事項であった建ぺい率について、本課題でも郊外の景勝地であることから60%と低く設定されており、当然1m ²でもオーバーすると失格となりますので、この点も重要な留意点といえます。
総じて、本課題は、計画要旨の記述力や正確な製図力等、いずれも合格のための重要ポイントであることは申すまでもありませんが、それらの中でも高度な建築計画力が特に合格のための重要な鍵となる高度な内容のものであったといえます。
本会の設計製図講座では、前半は、主に基本的な建築計画力の養成に力点を置き、後半は、25年試験課題の対象建築物である「大学セミナーハウス」について、特に、周辺環境・景観に対する配慮、勾配屋根の計画、天井高の高い大セミナー室等の大規模空間のある場合の構成、豊かな交流のための空間形成等に力点を置いた練習課題により高度な応用力の養成を図りました。

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