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平成24年度一級建築士学科試験の総評
平成24年度一級建築士学科試験の内容は、21年度の試験内容の見直し以来の一貫した傾向である、近年の社会状況、新技術に係わる内容の問題が新規の問題として各科とも何問か出題されていることが目立つほかは、全体的にいわゆる難問の比率は多くなく、このため、合格のための基準点、総得点も高くなることが予想されるものとなりました。
また、一部、計画と法規、法規と構造などそれぞれ両方の科目に係わる問題が出題されるなど、個々の科目にとらわれない総合的なより深い理解力を必要とされる問題が出題されたことも注目されます。
学科 I (計画)
この科目は、難しい理論の理解を必要とする問題は少ない割に、非常に幅広い分野の知識を必要とする問題が多いことが特徴です。24年度で特に目立ったのは、町づくりに係わる問題で、この種の問題は我が国のこれからの地域の活性化など、今日の社会情勢を色濃く反映したものとして注目されるものと言えます。ちなみに本会が公益事業の一環として取り組んでいる日仏景観会議なども、今日のこのような問題に強い係わりを持つものと言えます。
また、計画に係わる職業倫理や設計と工事監理の業務内容に係わる問題も出題され、計画の分野の問題としては目新しいものと言えますが、これらの問題は本来、法規における建築士法としても出題される内容のものであることに留意しておく必要があります。
なお、少子化、高齢化に係わる施設の問題も近年の傾向として定着した感がありますが、近年、出題されることの多くなっている近代建築作品・著書に係わる問題が多くなっているのも今後の傾向として注目点といえます。
学科 II (環境・設備)
この科目の分野は、エネルギーや環境等の今日的な社会情勢に最も直接に関連するため、毎年、いわゆる新規の問題が何題か出題されており、24年度も太陽光発電システムに係わる問題等が出題されているのが注目されますが、全体的には、熱伝導に係わる熱力学の問題や採光計画に係わる問題等、比較的しっかりした基礎的な知識があれば解ける問題が出題されていました。
学科 III (法規)
建築法規は元来、建築に係わる全ての分野の事項について法で規定されたものであるため、他の科目とも係わりの深い問題が出題される傾向がありますが、24年度も、建築構造の分野でも出題される可能性のある構造計算適合性判定や保有水平耐力計算に係わる問題が出題されました。
また、建築関連法規として、近年、比重が高くなってきている建築士法も3問出題されていますが、特に平成18年に大幅に改正された部分等も含め今後も留意する必要があります。なお、建築関連法規からは近年のストック型社会の到来を反映した改修・改築に係わるものとして、また、東日本大震災とも係わりの深い耐震改修促進法に関する問題が出題されていたのも注目されます。
学科 IV (構造)
この科目は、材料力学、構造力学、構造設計、建築材料の分野からなり、理論の理解の積み上げが必要であるため、多くの受験生が苦手と思う分野ですが、24年度の問題は全体的に昨年に引き続き比較的素直で多くは確実な基礎力を身に付けていれば、解くことが出来る問題であったと言えます。しかしながら、上記のように、この科目については、理論に対するしっかりした理解力の養成が不可欠であり、来年以降は難化傾向となることも否定できないため、早期からの着実な基礎力の養成とその上に築かれた応用力の養成を心がけて準備を進めることが必要と言えます。
学科 V (施工)
この科目は、幅広い分野に係わる知識を要し、近年は詳細な専門的事項に係わる高い難度の問題が出題される年もありますが、本年の問題の内容は概ね素直で平易な問題が多かったと言えます。今後の問題の傾向としては、ストック型社会を反映した改修に係わる問題や、施工管理、契約に係わる問題等に引き続き特に留意して行く必要があると考えられます。
21年度に試験の内容が見直されて以降、本年の試験の内容は総体的に難易度は低下したとも考えられます。特に、理論への理解の裏付けが必要な環境・設備と構造及び施工で素直な問題の出題が多かったと言えますが、他方、計画、法規では新規な難問と言える問題も何題か出題されていたことも注目されます。いずれにしても、学科試験はいわゆる相対評価によって合否が決まるため、単に問題が難しかったから合格が難しくなる、問題が易しかったから合格が易しくなるというものでは無論ありません。このため、24年度の試験の内容は、来年の試験に向けてのあくまでの目安であることを理解し、あくまでも各科目についての徹底した基礎力の養成と、その上に築かれた応用力が合否の鍵であると言えます。
- 2012年7月23日 -

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