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―より設計の自由度の高い、高度な新傾向の課題―
本年度の一級建築士設計製図試験「事務所ビル」は、昨年の課題「集合住宅」に続き、いわゆる特殊な建物でない一般性の高い、一見、比較的平易な課題の建物とも考えられるもので、それだけにかえって課題条件については、様々な工夫がされたものとなる可能性が高くなることも予想された訳ですが、本年の課題は、昨年に続き延床面積の範囲が指定されない等、平成21年に試験実施機関より試験内容の見直しとして示された、いわゆる自由度の高い課題の出題傾向が一段と顕著なものとなりました。
出題の形式
前述のように、本年の課題条件は、昨年、初めて延床面積の範囲が示されなかったのに続き、延床面積の範囲が示されないものとなりましたが、課題条件に、延床面積の範囲が指定されていないということは、通常、課題の建物の計画を進めるに当たっての重要な手掛かりともなるものが示されていないということで、それだけ受験者の考える余地の多い、自由度の高い難度の高い課題ということになります。
更に、本課題では課題条件として従来と異なり、階数の指定も示されていないため、建物の階数についても、受験者自身で、敷地に接する道路からの斜線制限及び基準階の合計床面積(3,000㎡以上)などを基に考えなければならない、この点でも従来にない自由度の更に高い課題となりました。
所要室について
本課題(事務所ビル)の主要部分である事務室については、その主体となる基準階は、2階から最上階の直下階で、貸事務室A、Bの合計は3,000㎡以上と指定されていましたが、基準階の階数は受験者が考えて決めるべきこととされていました。
なお、事務室の天井高はやや高めの2.8mと指定されていましたが、空調方式を空冷ヒートポンプパッケージ方式天井カセット型とするか、ダクトを天井裏に通す場合でも、梁貫通とすることなどにより、階高は4.0mとすることができます。
また、最上階は、会員制で短期に事務室や会議室として貸し出すシェアオフィスが入ることとなっており、基準階の貸事務室の運営主体とは異なる条件設定とされていました。
更に最上階の一部にシェアオフィスに設けるラウンジに隣接する条件で屋上庭園を設けることも指定されていました。
その他の主な所要室としては、コミュニティホールとレストランが指定されていましたが、コミュニティホールはその使用目的から、レストランは屋外テラス席を併設することなどから、いずれも1階に設けるべきものと考えることができます。
なお上記の室の天井高はいずれも指定されていませんが、天井高はいずれも2.8~3.0mとし、階高を4.0mとすることでよいと考えられます。
その他の課題条件について
延べ面積の指定や階数の指定のない本課題の計画を考えるにあたってその鍵となり、重要な手掛かりとなるのが、敷地の北側と南側に接するそれぞれ幅員10mの道路からの道路斜線による高さ制限です。
道路を挟んで集合住宅のある北側からを管理用のアプローチとし、道路を挟んで店舗付事務所ビルのある南側からを利用者用のメインアプローチとして、それぞれの道路から必要な建物の後退距離の緩和条件を織り込んだ道路斜線による高さ制限が、この建物の高さや階数を考える上での有力な手掛かりとなります。
更に、容積率の制限とともに、北側と南側の道路からの後退距離等を織り込んだうえで算定されるおおよその建物の1フロアー当たりの面積が、上記で想定される建物の階数とともに延床面積を考える上での手掛かりとなります。
本年度の課題は上記のように従来になく設計条件の指定を外して、従来以上に受験者が自ら考える範囲(余地)を多くした自由度の高い課題条件としたもので、平成21年に発表された試験内容の見直しについて、その傾向が一段と顕著となったもので、より実際の設計に近い、より高度な建築計画力を必要とする課題で、今後の試験課題に続く正に新傾向の課題とも考えることができます。
当会の一級建築士 長期設計製図講座について
設計製図試験は、「設計」と「製図」及び「計画主旨の記述」について評価される試験で、いずれも合否を決める重要な要素ですが、製図及び計画主旨の記述は比較的短期間で学習することが可能なのに対して、設計(建築計画)については、合格に必要な能力を短期間で身に付けることは困難で、かつ試験における評価の比重も極めて高いため、まさに合否の鍵ともいうことができます。
このため、本会の長期設計製図講座では、設計(建築計画)についての基本的な能力を養成するためには課題の対象建物が何であるかは直接関係ないため、試験課題発表前から厳選練習課題10課題により設計(建築計画)力の基本的な能力を養成し、試験課題発表後は本試験課題に沿った厳選練習課題10課題により新傾向の試験課題に対応した高度な実践力の養成を徹底的に図ることとしております。
なお、本講座では、合格に必要な製図力及び計画主旨の記述力の徹底養成をもあわせて図ることにより毎年高い実績をあげております。
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