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2022年度一級建築士学科試験の総評

平成21年度に一級建築士試験の内容の見直しが公表されて以来、近年の技術の進歩、社会状況の変化等に係わる出題が徐々に増加する傾向にありましたが、本年の試験では、各科目で更にその傾向が顕著となりました。なお、本年の試験では、計画、環境・設備、法規はほぼ例年並みの難易度の出題でしたが、構造、施工ではやや難度の高い出題が目立ちました。

学科 I (計画)

計画の問題の出題範囲は広く、例年、環境、法規等の科目の分野からも出題されるのが特徴ですが、本年も幅広い分野から出題されました。

特に本年の問題としては、カーボンニュートラルの実現、再生可能エネルギーの導入・拡大に係わる設問や木材の炭素貯蔵についての設問等、近年の地球規模の環境に係わる脱炭素に向けた取り組みについての設問を含む問題が出題されたことは注目されます。

また、今日的テーマに係わる問題として、例年のように防災避難や防犯に係わる問題の他に、新たな傾向の問題として、住宅セーフティネットや医療施設におけるバリアフリーデザイン等、近年の国の施策とも係わりのある問題が出題されたことも特に注目されます。

また、例年のように計画の問題として建築士法に係わる問題も1問出題されましたが、本年は建築基準法との融合問題として出題され、正に建築士法、建築基準法の根元を問う良問が出題されました。

本年の計画の問題では、上記のように比較的新規な選択肢を含む程度の高い設問の割合が多く見られましたが、他方で、問題としては過去の既出題範囲内からの選択肢を含むものも少なくなく、それらについて正確な知識を有していることによって正解に至る問題も多く出題されました。

このため、本年の問題の難易度は総じて例年並みであったといえます。

学科 II (環境・設備)

本年の環境・設備の問題は、既出題分野からの問題も多く、難易度は概して例年並みでしたが、出題に際して単なる表面的な記憶ではなく、その事項を本質的に理解していないと正解を得ることが難しいように種々工夫された問題の出題が目立ちました。

出題分野別では、本年も、建築環境工学分野10問、建築設備10問の例年通りの出題でしたが、総じて環境工学では基本的な出題が多く、環境設備では最新の指標や技術に関連する用語や実務的な知識を問う問題が比較的多く出題されました。

新規の問題としては、ブーミング現象、潜熱回収型ガス給湯器等の新規の設問を含む問題や建築物と空調負荷の組み合わせの問題、ZEBについて様々な角度から問う問題など新傾向ともいえる問題が出題されたことも注目され、また、実務的な専門性の高い問題としては、電気設備の配線図記号や幹線の遮断機等の問題が出題されたのも本年の出題の新傾向として注目されます。

上記の他に、本年の問題では前述のように過去の問題に類似したものも比較的多く出題されましたが、いずれも単なる過去問を丸暗記した表面的な知識や理解では正解に至らないように工夫された問題が目立ちました。

学科 III (法規)

法規は、本年は建築基準法20問、関係法令8問、基準法と関係法令の融合問題2問が出題されました。

法規の問題は、年によっては改正法規等に関する新規の問題が出題されることがあるものの、例年、既出題範囲内の事項についての問題が主たるもので、比較的新規な問題に係わる出題は少ないのが近年の傾向ですが、本年も「容積率」、「建築物の高さの最高限度」などの毎年出題される定番ともいえる問題が多く出題されました。

但し、これらの問題も、窓の寸法等から法適合を判断する問題など出題形式に工夫をこらしたものが出題され、単に毎年出題される難度の低い問題とは言い切れない、相当に深い理解と精緻な知識がないと正解に至らないものが多いことにも留意する必要があります。

また、建築基準法以外の関係法令の出題としては、近年の社会状況の影響を反映した「建築物省エネ法」に係わる問題が昨年に引き続き出題されたことも注目されます。

また、建築士及び建築士事務所の在るべき立場を問う問題として、近年、重要視されてきている建築士法に関する問題が本年は3問出題され、更に学科Ⅰ計画においても例年通り1問出題され、また、学科Ⅴ施工においても関連する問題が1問出題されたのと合わせると計5問出題されたことにも、今後とも留意しておく必要があります。

学科 IV (構造)

構造においては、近年の出題傾向としては新傾向といえる問題は比較的少なく、難易度も比較的高くない傾向が続いていましたが、本年は、新傾向ともいえる問題も含め、やや難度の高い問題の出題が目立ちました。

力学の問題では、全塑性モーメントと合成ラーメンに関する問題で、より深い理解を要する比較的難度の高い問題が出題されました。

また、構造種別の問題では、特に鉄骨構造で難度の高い問題の出題が目立ち、更に本年は構造種別の問題とは別にプレストレストコンクリート構造、壁式鉄筋コンクリート構造、免震構造、制震構造等の耐震性に係わる問題が新傾向の問題として出題されました。

以上のような傾向から、本年の構造の問題は、いかにその内容、理論についてのより深い理解が得られているかを問うように工夫された比較的難度の高い問題の出題が目立ちました。

学科 V (施工)

一級建築士学科試験においては、理論の理解が重要な要素となる科目と、正確にいかに幅広く記憶しているかが重要な要素となる科目とに、概して大別することができますが、計画と施工は上記のうちで、正確に幅広く記憶していることが重要な要素となる科目ということができます。

以上のように施工では近年、毎年のように新規な事項についての知識を問う選択肢を含む問題が比較的多く出題され、結果的に難易度が高い科目となってきましたが、本年も概ね以上のような出題傾向が見られるものとなりました。

本年の問題の特徴としては、新規の問題として、諸手続で歩道切下げの申請について初めて出題された他、設備工事、各部工事では、ほぼ新規の設備分野の設問で構成されており、また、過去に出題された問題の類似問題であっても、遣方の検査、コンクリートの収縮ひび割れ、有機系接着剤の成分、外壁のひび割れ部分の改修工事に係わる問題等では、過去の正しい設問を誤った設問に変えることなどにより目新しい問題に改変された問題も比較的多く出題されました。

以上のように本年の問題も、施工に係わる専門用語や工事の流れ等について、より深い理解、より正確な知識を必要とする問題が多く出題され、総じて難易度は例年よりもやや高いものとなりました。

一級建築士講座

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