全日本建築士会について 50余年の建築士育成事業の実績をもとに、一般社団法人全日本建築士会が総監修した、建築関連資格の特別養成講座

合格への鍵 講座>本試験の総評>学科試験の総評(一級)

2020年度一級建築士学科試験の総評

昨年度の一級建築士学科試験の難易度が例年に比してやや低かったのに対し、本年度の学科試験の難易度は高くなり、総じて例年並みのレベルとなりましたが、本年度の問題では、既出題範囲内からの問題であっても、従来の問題に比して、正解に至るためにより深い理解力を要するように、出題に工夫が見られる問題が目立ったのが、本年度の試験問題の傾向として注目されます。

学科 I (計画)

計画の問題の出題範囲は広く、例年、環境、法規等の科目の分野からも出題されるのが特徴ですが、本年は事務所ビルの計画の問題として、窓と熱負荷との関係について、非常用エレベーターについてのそれぞれ環境、法規に関するやや難度の高い問題が出題されました。

また、計画の問題としても近年ほとんど毎年出題されている建築士法に関する問題が、本年は建築士の主たる業務としての設計と工事監理の職責についての問題として計2問出題されているのは注目されます。

また、都市計画に係わる問題として、まちづくりに関する問題が3問出題された中で、歴史的資産を活かしたまちづくりについての問題と集合住宅・住宅団地の改修計画についての問題が出題されたのは、歴史的な資産、良質な社会資産の蓄積を重視する近年の傾向を反映した新規な問題として注目されます。

学科 II (環境・設備)

環境工学に関する問題が10問出題された中で、本年の問題は過去の出題範囲内からの問題であっても、建物の熱性能と室温変動について図の意味を読み解くなど、理論についてより深い理解を要する問題が目立ちました。

また、建築設備に関する問題が10問出題された中で、排水通気計画、太陽光発電システムのパワーコンディショナーの配線等、より高度な知識を要する問題が出題されたことも注目されます。

総じて、難易度の比較的高い設問も含まれていたものの、選択肢には過去の出題範囲内からの選択肢も多く含まれているため、難易度は例年並みであったといえます。

学科 III (法規)

本年の法規の問題の特徴としては、建築物の使用制限、建ぺい率の緩和、防火地域・準防火地域内の制限、既存建築物の一時転用に係わる制限の緩和、建築物省エネ法の届出時の評価書の提出等、近年の法改正に係わる事項からの出題が多かったことが挙げられます。

また、建築士法についての問題は、法規の問題では、建築士法単独の問題として3問、融合問題として1問、計4問出題されましたが、計画においても2問出題され、施工においても建築士法上、建築士の主たる業務としての監理業務の問題が2問出題されており、いかに近年重視される傾向にあるか理解されます。

学科 IV (構造)

構造の問題は、単なる記憶でなく、基本的な理論の理解が必要な問題が多いのが特徴で、本年も特に理論についての理解が不可欠な力学についての問題が6問出題されましたが、いずれも理論についてのしっかりした基礎的な理解があれば解ける問題でした。

また、一般構造の問題の中で、特に地盤、基礎構造、免震構造、特定天井についての問題は、既出題範囲外からの設問も選択肢に多く含む難易度の比較的高い問題であったといえます。

学科 V (施工)

近年の施工の問題は、施工者(施工管理者)の立場からではなく、監理者の立場からの設問が多く出題されていますが、本年の問題も監理者の立場からの設問が多いのが特徴となっています。

これは元来、建築士の試験が建築士法に基づくものであり、建築士法において建築士の最重要業務は、設計と工事監理とされていることによるものと考えられます。

また、本年の問題では、数値に係わる設問が全体の6割を占めており、それだけに、曖昧でない正確な知識が必要で、総じて、比較的難易度は高かったといえます。

本年の試験問題は、既出題範囲内からの問題であっても、より深い理解がなければ正解に至らないように工夫された問題や既出題範囲外からの新規な事項についての設問を選択肢として含む比較的難易度の高い問題が多く出題された一方で、過去問からの設問が選択肢に含まれるものも多く見られました。

以上から、今後も、従来以上に理論についてのより深い理解、知識を身につけることを心がける一方で、既出題範囲内の問題(過去問)についても、着実に学習しておくことが合否の鍵となると考えられます。

一級建築士講座

〒169-0075 東京都新宿区高田馬場3-23-2 内藤ビル401  一般社団法人全日本建築士会