(本欄は、当会の建築士講座講師が適宜分担して執筆し、当会建築士講座監修者(元国土交通省室長)が総合監修します。)
(第12回)令和5年9月22日
建築協定における一人協定とは何か?
建築基準法には、建築物に関する諸々の単体規定や集団規定の他にも様々な規定が定められていますが、中でも建築協定は少し趣の異なる規定です。
すなわち、建築協定は、あくまでも地域の住民・市民が主体であることが原則で、例えば、地域住民相互間で一定の区域について建築物の敷地、用途、意匠等について設けた基準を守るという自主的な申し合せを、特定行政庁が認可することによって、本来はその申し合せの当事者間にしか働かない規制を、土地の承継人にまで及ぼすことによって、その申し合せに永続性を与え、住民自身の手による良好な環境の街づくりに寄与しようとするものとなっています。
【問題】建築協定に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。
- 建築協定には、建築物に附属する門及び塀の意匠に関する基準を定めることができる。
- 建築協定を廃止しようとする場合においては、建築協定区域内の土地の所有者等の全員の合意をもってその旨を定め、これを特定行政庁に申請して認可を受けなければならない。
- 市町村の長は、建築協定書の提出があった場合においては、遅滞なく、その旨を公告し、20日以上の相当の期間を定めて、これを関係人の縦覧に供さなければならない。
- 建築協定において建築協定区域隣接地を定める場合には、その区域は、建築協定区域との一体性を有する土地の区域でなければならない。
この問題は、平成21年一級建築士法規の問題です。
設問1,3,4は正ですが、2の設問は、建築協定の認可及び建築協定の変更には、全員の合意が必要とされる一方で、建築協定を廃止しようとするときは過半数の合意があればよいので誤りです。
【問題】建築協定、地区計画等に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。
- 認可を受けた建築協定に係る建築物に関する基準を変更しようとする場合、建築協定区域内の土地の所有者等(借地権の目的となっている土地の所有者は除く。)の過半数の合意をもってその旨を定め、これを特定行政庁に申請してその認可を受けなければならない。
- 一の所有者以外に土地の所有者等が存しない土地の所有者が認可を受けた建築協定は、認可の日から起算して3年以内において当該建築協定区域内の土地に2以上の土地の所有者等が存しない場合には、効力を有するものとはならない。
- 建築物の敷地、構造、建築設備又は用途に関する事項で地区計画等の内容として定められたものが、市町村の条例で建築物に関する制限として定められている場合、建築確認の申請を受けた建築主事又は指定確認検査機関は、これらの事項に適合する計画であることを確認しなければならない。
- 市町村は、地区計画等の区域内において、地区整備計画の内容として定められた建築物の敷地面積の最低限度について、条例による制限として定める場合、当該条例に、その施行又は適用の際、現に建築物の敷地として使用されている土地で当該規定に適合しないもの又は現に存する所有権その他の権利に基づいて建築物の敷地として使用するならば当該規定に適合しないこととなる土地について、その全部を一の敷地として使用する場合の適用の除外に関する規定を定めるものとする。
この問題は、平成23年一級建築士法規の建築協定と地区計画についての複合問題です。設問2,3,4は正ですが、設問1は建築協定の変更には、問題1の解説でもふれましたように、全員の合意が必要ですので誤りです。
このように、建築協定の認可や変更のためには、全員の合意を必要とするというハードルが高く規定され、廃止のためには過半数の合意でよいというハードルが低く規定されているのは、この法の趣旨からも理にかなった考え方のように思われます。
また、設問2は、一例として、ディベロッパーが開発する分譲地の環境を良くすることを意図して、当初一人協定として建築協定の認可を得、その後、分譲して行くような場合が考えられます。この場合、その建築協定に同意する人は分譲地を購入するが、同意しない人は購入しないことで、当初意図した分譲地の良好な環境が維持されて行くことになります。
以上のように、建築協定の規定は、あくまでもその地域の住民・市民等を主体として、住民・市民等による申し合わせを法的にサポートしようとするもので、その規定の条文には、種々興味を呼ぶ重要な内容のものが含まれています。
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