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合格への鍵~重要必須事項について、近年の問題を通して解説~

(本欄は、当会の建築士講座講師が適宜分担して執筆し、当会建築士講座監修者(元国土交通省室長)が総合監修します。)

(第11回)令和5年9月6日

建築基準法における一石三鳥の誘導的基準

建築基準法では、法の適用について一部、緩和基準が定められています。
しかしながら、それらの中には、単に法の適用を緩和するだけでなく、ある目的のために誘導することを意図したものもあります。

例えば、道路に関する高さ制限の規定では、敷地に接する道路から後退して建築する場合は、その後退した距離だけ道路の幅員は広いものとみなして、敷地と反対側の道路端より一定の勾配の斜線内に建築することができることとなります。

これは一種の緩和基準ともいえますが、建築物を道路からできるだけ後退して建てさせることを目的とした誘導基準ともいえるものです。

この道路に関する高さ制限の当初の基準では、この道路から後退した距離だけ道路の幅員が広くなるとみなすことができるという規定はなく、後に現在の規定のように改正されるまで50年余りの期間を要しています。

前面道路から後退した建築物の道路斜線の図

このように道路から後退して建築した距離だけ道路の幅員が広くなるとみなすことができるということは、その分だけ敷地の反対側の道路端からの斜線が高くなり、その分だけ建築主から見れば、建物を高く建てることができるようになる訳で、建物を後退させようとするインセンティブが高くなることになります。

このように、行政側の負担も特になく、建築主には利益になり、道路から後退して建物が建てられることにより街並み等の環境も向上するという、正に一石三鳥のような効果を狙った基準で、改正までに要した50年分の知恵が凝縮された誘導的基準といえます。

【問題】図のように、敷地に建築物を新築する場合、建築基準法上、A点における地盤面からの建築物の高さの最高限度は、次のうちどれか。ただし、敷地は平坦で、敷地、隣地及び道路の相互間に高低差はなく、門、塀等はないものとする。また、図に記載されているものを除き、地域、地区等及び特定行政庁による指定、許可等並びに日影による中高層の建築物の高さの制限及び天空率に関する規定は考慮しないものとする。なお、建築物は、全ての部分において、高さの最高限度まで建築されるものとする。

前面道路から後退した建築物の道路斜線の図
  1. 13.5 m
  2. 18.0 m
  3. 27.0 m
  4. 31.5 m

この問題は、平成27年の一級建築士法規の問題です。
この問題は、北側の幅員の広い道路の影響による南側の幅員の狭い道路への緩和基準の適用とその結果に基づいた南側の道路からの建築物の後退距離による緩和基準(誘導基準)がこの問題の骨子となっています。

まず、法56条6項、令132条により幅員が最大の北側道路(幅員15m)の敷地境界線から幅員の2倍かつ35m以内の範囲と、その他の南側道路(幅員6m)の道路中心線から10mを超える範囲についてはすべての南側道路の幅員は、幅員が最大の北側道路と同じ幅員を有するとみなすことができるが、A点はこの範囲外にある(幅員6mの道路中心線から10m以内の範囲にある)ので、南側道路の幅員は6mとなる。建築物はこの道路から3m後退しているので、道路の高さ制限によるA点の高さの限度は、商業地域における斜線の勾配係数が1.5なので、(6+3×2)×1.5=18mとなる。また、商業地域なので隣地による高さ制限は31m以上となり、計算の必要が無い。よって、2が正しい。

【問題】図のような敷地において、建築物を新築する場合、建築基準法上、A点における地盤面からの建築物の高さの最高限度は、次のうちどれか。ただし、敷地は平坦で、敷地、隣地及び道路の相互間の高低差並びに門及び塀はなく、また、図に記載されているものを除き、地域、地区等及び特定行政庁の指定等はないものとし、日影規制(日影による中高層の建築物の高さの制限)及び天空率は考慮しないものとする。なお、建築物は、すべての部分において、高さの最高限度まで建築されるものとする。

前面道路から後退した建築物の道路斜線の図
  1. 8.75m
  2. 10.00m
  3. 11.25m
  4. 13.75m
  5. 15.00m

この問題は、平成21年の二級建築士法規の問題です。
この問題は、西側道路からの建築物の後退による緩和基準(誘導基準)の適用と、幅員の最大の西側道路の北側道路への影響による緩和基準に基づく北側道路からの建築物の後退による緩和基準(誘導基準)の適用が骨子となっています。

ただし、この問題では北側道路の元の幅員が4m以下であるため、法42条2項により、北側道路の元の幅員2mの道路中心線より2mの敷地側の線を道路境界線とみなすという規定を加味して考えねばならず、それだけやや複雑な内容の問題となっています。

道路高さ制限(法56条1項一号)
別表第3(に)欄より、準住居地域の道路斜線の勾配係数は1.25、(は)欄より、適用距離は20mとなる。
・西側道路(幅員5m)からの道路高さ制限は、法56条2項の建築物後退は2mなので、(2+5+2+3)×1.25=15.0m
・北側道路(幅員2m)からの道路高さ制限は、北側道路の幅員は、法56条6項、令132条より西側道路の境界線から、その幅員の2倍以内かつ35m以内の部分(すなわち、幅員5mの道路境界線から10m以内の距離)は、幅員5mとみなすことができる。ただし、「法42条2項の規定に基づき特定行政庁が指定した道」であるので、道路中心線より2mの敷地側の線を道路境界線とみなす。このため、法56条2項の建築物後退による緩和は2mとなる。

また準住居地域の勾配係数は1.25であるため、(2+5+2)×1.25=11.25m
隣地高さ制限(法56条1項二号)
準住居地域内については、高さ20mからであるので検討の必要なし。
北側高さ制限(法56条1項三号)
準住居地域については適用されない。
ゆえに、A点における地盤面からの高さの最高限度は、11.25mとなる。

前面道路から後退した建築物の道路斜線の図

以上のような高さ制限に関する問題は、道路斜線制限の外に隣地斜線制限や北側斜線制限等に関する問題もあり、また、建築物の形態規制に係わる問題として容積率や建ぺい率に関する問題も、出題頻度の極めて高い定番ともいえる問題です。

以上のそれぞれの規定については諸々の緩和規定があり、それらの緩和規定自体が問題とされることもあります。他方、上記の誘導的基準は、法規が単なる制限や制約のためだけに定められているものでもなく、高い理念や理想の基に定められているものでもあることが理解されます。

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