(本欄は、当会の建築士講座講師が適宜分担して執筆し、当会建築士講座監修者(元国土交通省室長)が総合監修します。)
(第10回)令和5年8月16日
建築基準法第27条の歴史的な改正
近年、木造建築への見直し機運は著しいものがあります。
この動きは、単に建築の木造化の推進ということだけに留まらず、広く環境問題という見地からも、森林のCO2の吸収効果や林業振興の見地から国産材の使用推進など、正に地方創生の一環として国策となっているともいえます。
このような動きを背景として、建築の木造化については、国交省、文科省、林野庁などにより、近年、具体的な推進策が図られてきましたが、建築基準法27条の平成27年の改正は、建築の木造化を一層推進するための歴史的な改正ともいえるものです。
27条の主な改正点は、従来の耐火建築物や準耐火建築物の他に、特定避難時間という性能規定的要素等を付加した特定時間倒壊等防止建築物の規定を新たに設けることにより、例えば3階建の校舎を木造の特性を生かして建築することを可能にするなど、従来以上に大規模建築物の木造化の推進を意図したものといえます。
【問題1】耐火建築物等に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。
- 防火地域内において、地下1階、地上2階建ての事務所を新築する場合は、耐火建築物としなければならない。
- 準防火地域内において、延べ面積1,000m²、地上3階建ての自動車車庫(各階を当該用途に供するもの)を新築する場合は、耐火建築物としなければならない。
- 準防火地域内において、延べ面積1,000m²、平家建ての倉庫を新築する場合は、耐火建築物又は準耐火建築物としなければならない。
- 防火地域及び準防火地域以外の区域内において、延べ面積2,500m²、地上3階建ての学校を新築する場合は、耐火建築物としなければならない。
この問題は、28年一級建築士法規の問題です。
設問1,2,3はいずれも従来の耐火建築物・準耐火建築物に関する定番ともいえる問題ですが、設問4は、建築基準法27条の27年の改正点に関する新規ともいえる内容の設問です。
設問1は法第61条により正しい記述です。防火地域内で地階を含む階数が3以上の建築物は、耐火建築物としなければなりません。
設問2は準防火地域内の特殊建築物であるので、法第62条と法第27条(法別表第1)の規定を確認し、厳しい方の規定を適用しなければなりません。法第62条第1項により、設問の建築物は、耐火建築物又は準耐火建築物としなければなりませんが、法第27条第2項第二号により、設問の建築物は、耐火建築物としなければなりません。
以上から設問2は正しい記述です。
設問3も準防火地域内の特殊建築物であるので、設問2と同様に、法第62条と法第27条の規定を確認し、厳しい方の規定を適用しなければなりません。法第62条第1項により、設問の建築物は耐火建築物又は準耐火建築物としなければなりませんが、一方、法第27条第2項第一号及び第3項第一号により、設問の建築物は、耐火建築物及び準耐火建築物以外の建築物とすることができます。上記の厳しい方の規定が適用され、結局、設問の建築物は耐火建築物又は準耐火建築物としなければなりません。 以上から設問3も正しい記述です。
設問4は、法第27条第1項第一号、別表第1(は)欄(3)項、令第110条第一号又は第二号により、設問の建築物は法第27条第1項第一号に該当する建築物であるため、その主要構造部の性能は、令第110条第一号又は第二号のいずれかに掲げる技術的基準に適合するものとしなければなりません。
したがって、令第110条第二号の技術的基準に適合する耐火建築物以外に110条第一号の技術的基準に適合する特定避難時間倒壊等防止建築物(令第109条の2の2)とすることができるため、設問4の記述は誤りです。
建築基準法27条の改正点に関する問題は、やや複雑な内容を含むものですが、今後、一級建築士試験、二級建築士試験の法規の問題として定番となって行くことも予想される要注意の分野の問題であるといえます。
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