全日本建築士会について 50余年の建築士育成事業の実績をもとに、一般社団法人全日本建築士会が総監修した、建築関連資格の特別養成講座
本会主催公益事業

本会設立60周年記念事業 市民シンポジウム・東京会場る

本会設立60周年記念事業 市民シンポジウム・倉吉市役所 建設の記憶をたどる

日越伝統木造建築会議 ベトナム・トゥア・ティエン・フエ

日越伝統木造建築会議 ベトナム・トゥア・ティエン・フエ

日越独仏韓5ヶ国 伝統木造建築 国際会議開催

国際シンポジウムの開催に向けて

ユネスコ・イコモスの日仏準備会議

日仏景観会議、倉吉

日越伝統木造建築会議 ベトナム・トゥア・ティエン・フエ

日越伝統木造建築会議 ベトナム・フエ

日仏景観会議、倉吉

日仏景観会議、伊勢

日仏景観会議、日光・田母沢・東京

合格への鍵 講座>合格への鍵 講座

合格への鍵~重要必須事項について、近年の問題を通して解説~

(本欄は毎週原則金曜日に更新します。当会の建築士講座講師が適宜分担して執筆し、当会建築士講座監修者(元国土交通省室長)が総合監修します。)

(第2回)令和5年4月22日

新傾向の問題で出題頻度が高く定番となりつつある問題は?

平成21年に一級建築士試験の内容の見直しが行われ、平成24年に二級建築士試験の内容の見直しが行われて以来、従来の出題範囲にとらわれない、いわゆる新傾向の問題、新規な問題が出題されるようになってきました。

そして、それらの中でも特に近年の社会状況、技術動向等を反映した問題は、以後、出題頻度も高く、毎年のように出題されるようになってきた問題も見られるようになってきました。以降に、それらの問題について整理して考えてみることとしましょう。

建築士法の重視

建築士の資格試験は、元来、建築士法の規定により行われているものであるため、建築士の試験で建築士法が重視されるのは半ば当然のことと言えますが、近年、建築士の不祥事が社会的に大きな反響を呼ぶなどの結果、建築士の職責、資質を改めて問うための建築士法の問題が重要視されるようになってきたものと考えられます。

平成29年の一級建築士試験においても、学科Ⅲ法規で融合問題も含め5題もの建築士法の問題が出題されており、その他の科目でも学科Ⅰ計画で1題、学科Ⅴ施工でも1題出題されています。

なお、学科Ⅰ計画で、近年、建築士法の問題が出題されるようになってからは、毎年出題される定番となった感があります。

【問題】建築士法に基づく建築士の職責、業務等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. 建築士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、建築物の質の向上に寄与するように、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。
  2. 建築士は、設計を行う場合においては、設計に係る建築物が法令又は条例の定める建築物に関する基準に適合するようにしなければならないとともに、設計の委託者に対し、設計の内容に関して適切な説明を行うように努めなければならない。
  3. 建築士は、違反建築物の建築等の法令違反行為について、指示、相談等の行為をしてはならない。
  4. 建築士は、建築物に関する調査又は鑑定の業務であれば、その業務に関して不誠実な行為をしても、建築士法の規定による懲戒処分の対象とはならない。

この問題は、平成27年度一級建築士計画の問題で、設問1は倫理遵守の規定の通りで正しく、設問4は建築士法第21条で規定されている建築士の業務についての全ては倫理遵守の義務があるため誤りとなります。

1回目で述べたように、一級建築士計画の問題として、平成28年度に引き続き29年度でも出題された技術者倫理に関する問題は、上記の問題に関連するものとして、近年の社会状況からも倫理遵守に係わることが重視されるようになってきたことの反映であると考えることができます。_

また、平成29年度二級建築士法規では、建築士法に関する問題として、個人としての建築士の規定に関する問題と建築士事務所の規定に関する問題の計2題が出題されましたが、建築士法では個人としての建築士についての規定と組織としての建築士事務所についての規定が車の両輪のような関係になっていることからも当然のことと考えられます。

建築の木造化の推進

近年、木造の耐震、防火性能の見直しや木造の質感への親しみ易さ等から木造建築が改めて見直されるようになってきているのは周知の通りです。

この傾向は、国土の約70%を占める我国の森林を有効に活用し、保全することによりCO2の吸収等の環境面で一層有効なものにしようとすることにも連なるもので、国の施策ともなっています。平成27年には、大規模建築物を木造で造る推進策の一環として建築基準法の一部が改正されましたが、平成28年度の一級建築士試験法規の問題で早々にこの改正点(法27条)に関する問題も出題されています。

以上のように建築の木造化の流れは大きな社会状況、技術状況を反映したもので、建築士試験の問題でも計画、法規、構造、施工の各科目で、今後、幅広く取り上げられて行くことは、間違いのないところであろうと考えられます。

ストック型社会の到来に向けた改修・修繕・再生

スクラップ・アンド・ビルドからストック・アンド・リノベーションへということが近年言われるようになってきましたが、これは高度成長期の「壊しては造る」型の社会からヨーロッパのような成熟期の「改修や修繕により永く使って行く」型の社会への移行を示すものとして使われる言葉で、「良質な社会資産の蓄積」は、国の重要施策の一つともなっており、例えば、近年の住宅の分野で注目されている「長期優良住宅」や「100年住宅」もこの流れの一つといえます。

以上から、建築士の試験問題でも計画では改修・再生・転用(コンバージョン)等の問題として、構造では、耐震改修や修繕の問題として、施工でも劣化診断や修繕の問題として出題されることが多く、近年これらの問題は、出題頻度の高い問題として定着しつつあるため留意が必要です。

環境・省エネルギー

近年、環境・設備の分野は、環境問題へ関心が高まるにつれ、また技術の進歩等に伴い、従来に増して環境についての新たな評価手法や省エネルギーについての新たな手法、及びそれらに係わる設備についての問題が新規な問題として出題されるようになってきました。

なお、平成28年度の一級建築士計画の問題として、自然の風の流れ等により設備機器によらずに冷房の省エネルギー化等を図るパッシブデザインの問題が出題されましたが、パッシブデザインについては平成29年度一級建築士の設計製図試験の課題条件にも取り上げられていることなど、今後とも充分注意すべき問題であると言えます。

少子・高齢化

少子・高齢化は申すまでもなく、我国における最も重要な社会問題の一つであり、高齢者のためのバリアフリー関連の問題も含め、近年は一級建築士試験でも二級建築士試験でも毎年出題されるいわば定番化した問題となっています。

また、近年は一級設計製図試験でも高齢者施設は出題頻度の高い課題となっていますが、平成28年度は少子化関連施設として子育てセンターが出題されました。

従来、学科試験でもどちらかというと高齢者関連施設が多く出題されてきましたが、今後は学科試験で少子化関連施設の出題が増えてくることも予想されます。

以上の他にも、特に一級建築士計画で近年出題頻度の高くなってきた問題として、防災に関する問題、プロジェクトマネジメントに関する問題もあげることができます。

次回より、上記のような近年の社会状況等を反映した問題として定着してきた感のある問題について、具体的に近年の試験問題を通じて、重要必須事項を解説して行くこととします。

▲TOPへ戻る

〒169-0075 東京都新宿区高田馬場3-23-2 内藤ビル301  一般社団法人全日本建築士会