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平成28年一級建築士試験 「設計製図の試験」の課題の講評!子ども・子育て支援センター(保育所、児童館・子育て支援施設)

(注1)パッシブデザインを積極的に取り入れた建築物の計画
(注2)地盤条件を考慮した基礎構造の計画
(注3)天井の高い居室における天井等落下防止対策の考え方
(注4)要求図面に、図示又は記入するもの

  • 主要寸法、室名、床面積
  • 設備スペース、設備シャフトの位置
  • 避難階段に至る歩行距離・歩行経路   等

平成28年度の一級建築士設計製図試験の課題は、「子ども・子育て支援センター(保育所、児童館・子育て支援施設)」と発表されました。子育て支援施設や保育所に関する複合施設の課題は、過去にも平成15年、平成19年に出題されるなど、少子化が大きな社会問題となっている今日、極めて時流に則した課題であるといえます。

本課題留意点−保育所−
さて、課題の括弧内の保育所は、厚生労働省が管轄する児童福祉施設として、
・保育所は、保育を必要とする0歳から小学校入学前までの乳幼児を対象として、日々保護者の下から通わせて保育を行う施設である。
・義務教育等の基礎を培うものとしての満3歳以上の幼児に対する教育は行わない。(教育は文部科学省の管轄する幼稚園で行われる。)
などのように規定されており、近年は、課題のように地域の子育て支援センターの一部となって、一定時間の園庭の開放やイベントや子育て相談を行っているケースや入所していない児童を一時的に預かる一時保育も行われることもある施設です。

−児童館−
また、児童館は、児童に健全な遊びを通して、健康を増進し、情操を豊かにすることを目的として設置されている屋内型児童厚生施設で、その種類によって、集会室、遊戯室、図書室の他、パソコン室、創作室、相談室等が設けられ、専門の指導員によって地域の実情等に合わせた健全な遊びの指導も行われており、また、子ども会や母親クラブなどの地域の活動の場ともなるなど、地域の子育て環境づくりや放課後児童の居場所づくりをも担っている施設で、厚生労働省告示により、小型児童館、児童センター、大型児童館の3種が示されています。

−子育て支援施設−
また、子育て支援施設は、課題括弧内で、児童館・子育て支援施設とも記されているように、別の固有の施設名ではなく、児童館をより子育て支援的性格の強い一般的な施設名称で言い換えたものと考えることができます。

−子育て支援センター−
本課題の子育て支援センターは、以上のような施設を複合化させ、複合化の効果をより高めることにより、地域の子育て支援に貢献することを意図するもので、厚生労働省の特別保育事業の実施に基づく施設として、事業の内容は、育児不安等についての相談指導、子育てサークル等の育成・支援、特別保育事業等の積極的実施・普及促進の努力、ベビーシッターなど地域の保育資源の情報提供等、家庭的保育を行う者への支援となっています。

本課題の建築計画上の留意点
本課題は、要求図書より3階建を前提としていると考えられることから、保育所は1階、または、1階、2階に設け、児童館・子育て支援施設は2階、3階に設けるのが一般的であると考えられますが、あくまでも保育所、児童館・子育て支援施設等の個々の施設についての明解なゾーニング、動線計画とともに、複合施設として共有部分を活かした総合的に明解な建築計画が求められ、以上は重要な合格ポイントともなると考えられます。

本課題で新たに示された注記事項
本課題で示されている「パッシブデザインを積極的に取り入れた建築物の計画」は、夏期、冬期などで、機械的な冷暖房等を使用せずに自然の風等を活用して、省エネを図りつつ、快適な室内環境を得ることを目的とするもので、新たな課題の傾向として注目されます。 また、本課題で示されている「地盤条件を考慮した基礎構造の計画」や「天井の高い居室における天井等落下防止対策の考え方」も近年、社会的に大きな問題となった事柄を反映したものといえ、「地盤条件を考慮した基礎構造の計画」は、軟弱地盤に対応した基礎構造など、建物の基礎構造に対する知識や判断力を問うもので、また、「天井の高い居室における天井等落下防止対策の考え方」は、震災による天井材落下事故等に対して、軽い材料、下地の補強など、防止対策の考え方を問うもので、いずれも新たな注記事項として注目されます。

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