全日本建築士会について 50余年の建築士育成事業の実績をもとに、社団法人全日本建築士会が総監修した、建築関連資格の特別養成講座
本会主催公益事業

日越伝統木造建築会議 ベトナム・トゥア・ティエン・フエ

日越伝統木造建築会議 ベトナム・トゥア・ティエン・フエ

日越独仏韓5ヶ国 伝統木造建築 国際会議開催

国際シンポジウムの開催に向けて

ユネスコ・イコモスの日仏準備会議

日仏景観会議、倉吉

日越伝統木造建築会議 ベトナム・トゥア・ティエン・フエ

日越伝統木造建築会議 ベトナム・フエ

日仏景観会議、倉吉

日仏景観会議、伊勢

日仏景観会議、日光・田母沢・東京

NEWS : 2009 : 平成20年度住環境管理講座

平成20年度

 住環境管理講座の開催報告

(社)全日本建築士会の公益事業として実施している建築士試験の内容とも関係の深い、平成20年度住環境管理講座が、12月20日(土)、全日本建築士会本部道具館ホールで開催され、高崎市・小田原市はじめ関東近県の受講者が多数、熱心に受講された。講義概要は次の通りである。なお、住環境管理講座へのお問い合せも受け付けております。

木造住宅の耐震診断と耐震改修

先に大きな被害を受けた阪神淡路大震災を経て、今日、改めて大規模地震に対する予防の必要性が認識され、関心が高まっている。この大地震では、大規模な建物の他に住宅についても大きな被害を被ったが、特に在来木造住宅の被害が大きいとも報じられた。

しかし、これは、比較的築後年数の長く経過した古い在来木造住宅が多かったことに起因する可能性が高いことも考慮する必要がある。いずれにしても、この機に木造在来構法による住宅への耐震診断、耐震改修の必要性への認識が高まることとなったのも事実といえよう。なお、阪神淡路大震災後に制定された耐震改修促進法においては、特に1981年の耐震基準の改定前に建てられた一定規模以上の大規模建築物について、耐震診断、耐震改修を促すもので、あくまでも努力目標に留まるもので強制力を伴うものでなく、また、一般住宅は対象外となっている。

以上からも一般住宅の耐震診断、耐震改修は主に自治体レベルの施策に委ねられた形となっている。このような状況の中で、耐震診断や耐震改修の費用の一部に対して、補助金による助成や税の減免等の施策を実施している自治体も少なくないが、現在、一般住宅の耐震診断、耐震改修は、懸念されるものに対して、20%から30%程度行われたに過ぎないとされており、大きな社会問題ともなっているのは周知の事実である。一般住宅の耐震診断、耐震改修が進まないのには、それらに要する費用や意識の問題など様々な要因が考えられるが、在来木造住宅についての耐震診断技術が必ずしも一般的に認知され広まっていないのも要因の一つと考えることができる。

現行の建築基準法では、木造の柱、梁の架構であるラーメンについての水平耐力を0と見なし、もっぱら壁体の耐力を地震力である水平力に対して抵抗するものとしている。これは本来の木造伝統構法の架構の継手の耐力を無視したものであるともいえるが、他方で、伝統構法に対しての技術、技能の優劣に余り左右されることなく、一般的に木造建築の一定の安全性を確保するためにとられた方策であると考えることができる。このため、伝統的継手によるねばり等を期待する代わりに、金物を多用し比較的簡単に接続箇所を固める構法が採られるようになった訳である。

ところで、近年建築基準法にも国際化、規制緩和の流れを受けて、従来の仕様的規定の他に性能的規定が大幅に取り入れられるようになってきて、その一環として、木造建築についても性能基準ともいうべき限界耐力計算法による構造設計が認められるようになってきた。これにより、木造の伝統的継手について、復元力を仮定するなど、伝統木造建築のねばりによる耐力を構造設計に反映することが可能となり、伝統構法の今後の展開に向けての大きな可能性が期待されるものと考えられる。

一方、耐震診断、耐震改修の対象となる木造住宅には、伝統構法、またはそれに近いようなものも多数含まれている。これらのものを地震力に対してもっぱら壁の耐力に期待する現行建築基準法による考え方を適用して診断することは余り意味がなく、限界耐力計算法の考え方をある程度取り入れた診断法によることが必要とされる。

他方、限界耐力計算法自体は、相当高度な判断を要する計算法でもあり、この考え方を直ちに一般に適用することは現実的とも言えない。このため、限界耐力計算法の考え方を基としつつも、それを一般に利用できるように工夫した耐震診断法の普及とその理解が、在来木造住宅の耐震診断、耐震改修を進めて行くためには不可欠のことと考えられる。

最近の法改正

1、新しい建築士法(平成20年11月施行)

建築士制度の見直しの概要について
イ、建築士の資質、能力の向上
1.受験資格の見直し

・学歴要件では従来は「所定の学科卒業」が「国土交通大臣が指定する建築に関する科目を修めて卒業」と変更される。
・実務経験要件では従来は「建築に関する実務経験」が「設計・工事監理、建築確認、一定の施工管理」等の設計、工事監理に必要な知識、能力を得られる実務に限定される。

2.一級建築士試験内容の見直し

・現行の学科1(計画)について、「計画」と「環境・設備」の2科目に分離し、合計5科目とする。科目ごとの設問数は学科1(計画)20問、学科2(環境・設備)20問、学科3(法規)30問、学科4(構造)30問、学科5(施工)25問の計125問となり、5枝択一式から4枝択一式に変更される。
・設計製図について、従来の設計課題に加え、記述・図的表現などの手段により、構造設計や設備設計の基本的な能力を確認する出題を行う。

3.定期講習制度の創設

建築士事務所に所属する建築士に対し、3年ごとの定期講習の受講が義務付けされる。内容は、1日間(6時間程度)で講義の後、終了考査が実施される。

ロ、高度な専門能力を有する建築士による構造設計及び設備設計の適正化
1.構造設計一級建築士/設備設計一級建築士制度の創設

一級建築士として5年以上構造設計/設備設計に従事した後、講習を終了し、構造設計一級建築士/設備設計一級建築士証の交付を受けた者を構造一級建築士/設備設計一級建築士とする。

2.一定の建築物について法適合確認等の義務付け

高度な専門能力を必要とする一定の建築物の構造設計/設備設計に関し、構造設計一級建築士/設備設計一級建築士の関与(自ら設計する、または、法適合確認を行う)の義務付け
 *高度な専門能力を必要とする一定の建築物

・構造設計の場合(鉄筋コンクリート造高さ20メートル超、鉄骨造4階以上等)
・設備設計の場合(階数が3以上、かつ、床面積が5、000平方メートル超の建築物)

ハ、設計・工事監理業務の適正化、消費者への情報開示
1.管理建築士の要件強化

建築士事務所の管理建築士になるためには、建築士として3年間の所定の実務経験を積んだ後、管理建築士講習の受講が義務付けられます。

2.管理建築士等による重要事項説明の義務付け

設計・工事監理契約の締結前にあらかじめ、管理建築士等が、建築主に対し重要事項(設計図書の種類、報酬の額等)について、書面を交付して説明を行うことが義務付けられた。

2、開発許可の改正(平成19年11月施行)

都市計画法のよる開発許可制度の改正の概要
1.公共公益施設の立地

従来、一定の集落等が形成されている場所に、規模の小さいものが立地することを想定し、開発許可は不要とされていたが、高齢者を含めた多くの人々にとって便利な場所に立地するよう、まちづくりの観点から適否を判断する等により、開発許可制度が適用される事に改正された。

2.許可不要な開発行為(社会福祉施設等に係る開発行為)の見直し

生活関連施設である保育所、学校(大学、専修学校及び各種学校を除く)や主として周辺の居住者が利用する診療所、助産所及び児童養護施設、特別養護老人ホーム等が許可不要から許可を要すること改正された。

3、建築物の構造計算

1.建築物は、その自重、用途に応じた積載荷重(居住人員、家具、設備機器、商品、自動車の荷重)を安全に支持する構造とし、積雪、風圧、土圧、地震及び衝撃に対しても安全な構造のものとして、法令で定める技術基準に適合しなければならない。(法第20条第一号)
2.構造計算を要する建築物(法第20条第一〜三号、令第81条)

ア 高さが60メートルを超える建築物
イ 木造(階数が3以上、延べ面積500平方メートル超、高さ13メートル軒の高さ9メートル超)
ウ 木造以外(階数2以上、延べ面積200平方メートル超)
エ 石造、れんが、コンクリートブロック造等(高さ13メートル軒の高さ9メートル超)

3.構造計算(令第81条〜第82条の6)

高さが60メートルを超える建築物の構造計算は時刻歴応答解析等の構造計算を行い、国土交通大臣の認定を受けなければならない。また、その他の建築物は規模、構造により、層間変形角、保有水平耐力計算、限界耐力計算、許容応力度計算をしなければならない。

樹(森林)・木(木材)の効用

生物材料である木材は人と地球に優しく、居住性にも優れている。木材の持つ主な機能は大きく分けて3つあり、次のとおりである。

1.地球環境の保全
2.丈夫で長持ちする
3.人に優しく潤いと安らぎをあたえる


1.地球環境の保全

1、樹木は二酸化炭素を吸収・固定し温暖化を抑制する

樹木の光合成により成長し、二酸化炭素を吸収する。

光合成は、地中から吸い上げた水と、大気中から吸収した二酸化炭素を使い、太陽光を利用してブドウ糖を生産し、セルロース・リグニンの細胞をつくり、二酸化炭素を固定する。この時、樹木は二酸化炭素を吸いながら酸素を大気中に放出する。

光合成の化学反応式から計算すると、1キログラムのブドウ糖を作るためには、600グラムの水と1.5キログラムの二酸化炭素が消費され、1.1キログラムの酸素が大気中の放出されることになる。

木材の乾燥質量の半分は炭素であり、木造住宅を造ることは都市に第2森を造り、二酸化炭素を抑制すると言われるゆえんである。

2、木材は生産エネルギーが最小で環境負荷低減する

大手ゼネコンの調査によると、学校の体育館・校舎・倉庫等鉄筋コンクリート造にせず、木造にすることで、生産段階での必要エネルギー地球温暖化ガス(CO2)の排出量を削減できる。

建設資材の種類を調べ、生産段階での必要エネルギーを地球温暖化ガス(CO2)に換算、その排出量を木造と鉄筋コンクリート造を比較すると、鉄筋コンクリート造が床面積1平方メートル当たり137kg(炭素量)であるのに対して、木造は71.3kgと約半分で地球温暖化防止に有効である。

環境負荷低減の原則は
・建物(建設・使用・取り壊し時)のエネルギーを減らすこと
・物理的・社会的耐用年数をのばすこと
・環境負荷の小さい材料を選択し、利用(再利用)することである。

製造、廃棄時に環境負荷が小さく、リサイクルしやすい材料として、木材が最良である。

2.丈夫で長持ちする

1、木材の強度は鋼材より強い(質量当たり)

一般に木材は軽くて強いといわれている、質量当たりの強さで比較すると、たとえば、スギの強度と鉄などの他の材科を比べると、引張り強さ、圧縮強さ、いずれも木材の方が強いという結果がでている。

建物において軽くて強いことは、重要な意味をもっている。地震力を考えてみると重たい建物ほど地震力が大きく作用する、たとえば、同じ体積のコンクリートと木材を比べると、コンクリートの方が大体4倍から5倍地震力が作用する。

2、燃えても強度を保ち、鉄骨より安全

木材燃えるから弱いというのが一般的な感覚があるが、木材は燃えるが、燃えるのは表面からで、酸素が供給される表面だけが燃えるので急激に強度が落ちることはない。

アルミニウムは600度でただれ溶け、鋼材は500度で強度は半減し、650度で耐力は1/3になる。

木材の表面が炭になって失われていくスピードは、1分間に大体0.6ミリメートルから0.8ミリメートルぐらいである。30分間もたせようと思ったら、30かける0.7で21ミリメートル、火災時の安全はかるために25ミリメートルとして、これは始めから無いものとして考えようというのが、近年の建築設計でとり入れられている発想である。

3、耐久性は抜群

木材の強度は、腐らないかぎり約1000年までは変らない、腐るのは腐朽薗という菌が付くからであり、それが付かないようにするのには、水が定滞しないように、水の管理をきちんとすることである。

3.人に優しく潤いと安らぎをあたえる

1、目に優しい

可視光より波長が大きい光を赤外線(波長が780マイクロメートルより大きい)小さい波長を紫外線(380マイクロメートルより小さい)と呼ぶが、いずれも目には見えないけれど感じることができる、木林は黄や赤の可視光に加えて、赤外線の反射も大きく、それが「温かさ」を感じる。有害な紫外線の反射は小さく、目に対する勅激が小さいのでそれが「心地良さ」の一の理由と言われている。

可視光線全体では反射率は50〜60%であるから、強い光があたっても「まぶしく」ない。木の表面に細かな凸凹があって光が散乱するため、反射率が低くなり眼にやさしい。

2、音をまろやかにする

コンサートホールや教会など音響を重視する建物では、壁・天井材に多くの木材が使われている。木材は人の可聴範囲の中で不快感のともなう高音部と低音部を吸収する働きがあり、よい音響空間を生み出すのに役立っている。

木や畳は吸音率が適度であり、周波数で調べても、高音・中音・低音をバランスよく吸収し、快適なことがわる。木材は音をまろやかにする内装材である。

3、木は熟を伝えにくく温かさを保つ

木が熱を伝えにくいのは、細胞の中に空気が詰まっており、細かく区分けされた空気層により断熱性が高く、暖かく感じる。

木材は、熱を伝えにくく(熱電導率が小さい)、熱を蓄えやすい(容積比熱が大きい)材料であり、このため断熱性と保温牲に優れている。

断熱材の失熱量を1とすると、木材は2、土壁は15、コンクリートは30という具合に熱が失なわれ、コンクリートでは木材の15倍くらいの熱を奪われる。

4、床は衝撃を和らげる

体育館の床などは、適度な衝撃吸収力と硬さが要求される。木材は、多孔材料であり、木床は、局部変形とたわみ変形によって衝撃を吸収するために、転倒などのけがに対して安全性が高い。木材が体育館の床に多く使われるゆえんである。

5、室内の湿度を調節する

室内の湿度は、室温の変化、水蒸気の発生、外気の流入などいろいろな原因で変化する。木材に囲まれた室内で、これらの原因で室内の湿度が高くなったときには、木材は吸湿し、空気中の水蒸気を取り込む。

一方室内の湿度が低くなるときには、逆に木材は大気中に水分を放出して、室内の湿度を上げようとする。木材は大気に比べて湿気を蓄える能力が大きいので、木材中からの水分の出入りだけで室内の湿度変化を少なくすることができる。この作用を木材の調湿機能と呼んでいる。調湿作用に快適な室内湿度50%を保つ事が出来る。

木材の調湿能力はたとえば、10センチ角、長さ3メートルの針葉樹の柱は、湿度が40%から80%変化すると、一本でなんと1.2リットルもの湿気を吸収してくれる。

木造建築の部材として使われた木は、それが接している空気の湿度と温度に応じた含水率で平衡状態になる。この状態での含水率を平衡含水率と呼ぶ。

日本で雨のかからない外気中に置かれた木材の平衡含水率は、地域や季節によって違いがあるが、おおざっぱにいえば、10%〜20%のあいだである。

ちなみに温度が20度、空気の相対湿度が70%前後のとき、平衡含水率はおよそ15%になる。 木材には、調湿作用があり調湿効果があるので木材は結露しにくい材料である。結露防止はカビ・ダニを抑制する。

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